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心が死ぬ

生きているのが辛い

心が死んでしまいそう






そう思うときもある
















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太陽の国

心の中に
穴が開いていた




人との摩擦が
心を
掻き乱す





感情障害は
苦しみも
哀しみも
遅れてやってきた



気分が悪いな、と
おかしいなと
考えていると
だいぶ時間が経って
傷ついた出来事に気が付く








あ、あの時のあれか・・・







そう思って
心を整理する




仕事漬けの毎日
それはそれでよかったけれど
仕事は
楽しいけれど
精一杯だけれど
心が忙しかった




他人と関わることの
難しさ
世の中の荒波に
揉まれたことのなかった
私の心は
怯えて
震えて
幼子のように
小さくなっていた







自信を持ちなさい







まみさんは言う




自信は
持てなかった


出来ることも多くなると
出来ないことも多くなった


不安材料は
増えていって
沈黙が怖かった
沈黙が耐えられなかった




午前中から
深夜まで
仕事をして
職場の人間としか
関わりがなかった





ホールの
お局が
ゴッドファーザーに
可愛がられている
私に
当り散らしている



既婚のお局は
なんとか
ゴッドファーザーに
振り向いてもらうために
なんでもして
閉店まで
仕事をした





人一倍
タイムカードに
精力を注ぎ
人の誤魔化しを許さず
自分では
一生懸命
誤魔化した




平気な顔をして
店内を闊歩して
パエヤの大鍋を
客席に運ぶ時の
賞賛を受けんがために
その時に全精力を注いだ



お局は
スポットライトが好きで
脚光を浴びるのが
好きだった






彼女の
努力も
笑顔も
喜びも
すべては
ゴッドファーザーへの想いだった





お局の
その想いを
知ってか知らでか
ゴッドファーザーは
振り向くことはなかった




お局の笑顔は
痛々しかった








65歳を追う
50代の女






その女は
まるで
少女だった

















真冬のお祭り男

11月24日





店内は
人で溢れていた


年末になろうとするこの時期
否応なしに
客が増えるようだ





店は
大きなマラソン大会の
コースの上にあり
この日は
通行証がないと
店までの道のりが
封鎖されていた







人生で
こんなに一生懸命
こんなに必死に
こんなに楽しく
仕事をするのは
初めてだった





大器晩成型
と言われて
そんなの嘘だと思って
薬漬けになっていた日々も
ようやく
忘れられる気がした








ホールに出て
接客をし
パエヤを焼き
パエヤを盛って
チュロスを揚げ
洗い物をし
掃除もこなして
夜は
厨房に立った




必要あらば
お供で
出かけるために
運転もした






生きている






そう思う









己に
自信など
皆無だったが
そんな不安すら
感じている余裕もなかった







客は
決して
いい客ばかりではなく
小娘と見た私に
専門的な
意地悪な質問をする
嫌な客もいた



質問に答えられないことを詫び
ホールの責任者に







スパニッシュオムレツはスペインのどこのものですか?






と訊くと







何処でも作ってるのよ!そう言ってきて!!!







無責任な返事が
返ってきた




厨房に訊こうと
店の奥に向かおうとしたときに
目の前に
ゴッドファーザーが現れて







どこ







とだけ言った






メサです








私が答えると

スッと
ゴッドファーザーが
メサに向かって歩いて行った








しばらくして
奥に戻った
ゴッドファーザーは
ニッコリ微笑んで







お前はスペインのガイドブックを読んでスペインを勉強しなさい  ガイドブックが一番近道だからね







と言い

2階に戻っていった







パエヤのコンクールで
世界で6度も
優勝し
様々な肩書を持つ
彼は
決して
偉ぶることがなかった








しばらく この店で働いて自分を磨きなさい









真冬のお祭り男は
スペインの太陽よりも
熱い
熱い
男なのだと


笑顔の奥の瞳が
語っていた
















召される支度

季節は
もう冬になったか



毎朝寒い





今月に入って直ぐ
あさみが
スリップした


順調に
回復していた
あさみは

先ず
市販薬のスリップから
飲酒のスリップ
そして
堅気ではない
友人に
シャブを盛られて
薬物のスリップとなった








ひさみちゃん助けて切れ目でまたやりたくなる







私の知らない世界に
身を置く彼女の叫び


なんとかしてあげたかった






電話をしても
息も絶え絶えで
話も
途切れ途切れだった




車を飛ばして今から行こうか??




という




目が座っているから顔をみせたくない




と言ってみたり





直ぐ会いに来て





と言ってみたり



本人も
コントロールできない
現状が
辛そうでならなかった







何故
突然のスリップに
陥ってしまったのか






結局のところ
依存症は
アディクションは
回復はしても
完治はないのだ








ここしばらくの間
私も
自分の
アディクションが
面倒でならなかった




仕事に
集中すればするほど
病気を
面倒に思うようになった







極度の
淋しがりを
治さないと
この先も
ずっと苦しむのだということは
解っているが
それが
仕事にのめりこむことで
多少なりとも
緩和されているのも
事実だった





人生で
初めての
充実と
労働の快感を得ていた









人間にとって労働は大切な行為だよ 労働の中に満足や快感を得て 人としても成長していく
自信を高めていくんだよ







御年65の
ゴッドファーザーは



目を細めながら
太郎を抱いて
そう言った







この人は
どんな人生を歩んできたのだろうと
考えてみたけれど
想像もつかなかった





雑誌の表紙になったこともあったから
編集者から
送られてきた
雑誌が
積んであることもあったが
一切
興味を示さなかった









もう一店舗作るんだ スペインの鮮やかな色彩の店だ 私がいなくなっても みんなが困らないようにね
老いて その後の支度をするのも私のような老人の仕事だ







そう言って
店の表にある
工場に向かう












ゴッドファーザーの
背中は
丸まった老人の背中でなく
逞しい
一人の男性の背中
そのものだった

















開花したいから

お前はね、能力がないんじゃないんだよ、発揮できる場所がなかったんだ
秘めたる眠った能力は これから開花するよ






ゴッドファーザーが言う





ゴッドファーザーは
私の微々たる料理の能力を
直ぐに
見抜いて
チャンスをくれた



週に一度の休みも
有意義に過ごせる
よい習慣がついた







生きて
労働していくうえでの
運命の師に
やっと出逢えたのだと思う







公の場に
お供でついて行くようになり
ゴッドファーザーに
媚びる大人が
私にも群がった




彼に直接話しかけられない
企業が
私に問うてくる








社長はこれを使いませんか??


こういうものはお好きでないですか??


お名刺いただけませんか??









お供ですから私には何の権利もないのですよ








そう言っても
男達は
ゴッドファーザーが
席を立つと
私の元に駆け寄った








必要とされること
信頼されること
期待されること





あの方と過ごした
2年間の時が
よみがえった






あの方は
今も








お前を見ているよ








と言ってくださる



私の
生きる原動力のすべてだ







生きることを
頑張れるようになったのは
あの方のお蔭だった








お前は捨てたよ








仰られた時には
地に落ちたが


そこから這いあがるための
努力を
惜しんではいけない










世界で頂点を極めたゴッドファーザーに
ついていけるという
贅沢を
チャンスを
今は
無駄にしてはいけない










もう一度
あの方の胸に
飛び込みたいから



















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